ef-ef14の軌跡

『竜とそばかすの姫』は第三のウォーゲーム!?


細田守監督の最新作竜とそばかすの姫をようやく見ました!

細田作品好きではあるんですけどね・・・。金曜ロードショーでは一度延期になってから放送されてましたが、代表戦と被ってて見れず。

世間の評判があんまりだったのと、個人的な近年の細田作品に対しての評価もあんまり・・・って感じだったのでまぁ後でいいかとだいぶ時間が経ちました。

去年の夏から行っていたFC活動『涼宮ハルヒ』を見る回がおわりまして、次の視聴作品を考えたときに、そういえば見てなかったなと思って今回見てみることに。

 

想像してたより良かった

 

タイトルからして『バケモノの子』みたいなファンタジー路線なのかと思いきや、冒頭から『サマーウォーズ』そのまんまw 『OZ』が『U』って名前に変わっただけ!でかいクジラも泳いでるし。アバターが自分の見た目から自動生成されるのと本来の能力を引き出す?という機能があること以外は『サマーウォーズ』のような世界観と言ってもよさそう。

サマーウォーズ』はね・・・だいぶ好きです。単純にめちゃくちゃ面白いし。なによりその元となった『デジモンアドベンチャーぼくらのウォーゲーム』は自分を構成する魂の基幹となっているような作品です。きっと吉Pにとっての逆シャアみたいな

『竜とそばかすの姫』では『サマーウォーズ』だけじゃなくて『ぼくらのウォーゲーム』を意識したシーンもたくさん見受けられました。ジャスティンの武器はオメガモンのガルルキャノンだし、アバターに囲まれた球体の中でのひと悶着はディアボロモンとの戦いを彷彿とさせる。決定的に違うのは「島根にパソコンなんてあるわけないじゃん」が、高知の路上からログインできるほどに技術が進歩しているところ!これが20年の差か。

そして『美女と野獣』でもありましたね。展開もまんま”それ”でした。でも考えてみればタイトルからして”それ”ですし、主人公のハンドルネームも「ベル」ですからね。パクリというか完全にオマージュしたんだなと。

サマーウォーズ』と『ぼくらのウォーゲーム』で『美女と野獣』をやった映画。まぁそれだけだったら二番煎じでつまらないって評価になるかなって思います、が!それらをベースにしつつ『竜とそばかすの姫』たる所以があったように思います。

 

それは主人公「すず」が陰キャなところです!

学校一の美少女なわけでも胆力のあるプリンセスでもない。世界の危機、救いません!

派手で壮大なシーンが多くあるも、実際にこの映画で成した事は、親の虐待から少年二人を救っただけ。世界中を歌で虜にしたけれどそれは副産物的なもので、すずは「竜」を救いたい一心でした。それが逆に親しみを持てたんですよね。

エオルゼアという仮想世界で過ごしていることも多いですからね。 名前も住んでる場所も知らないけど一緒に過ごす時間が好きだし、もし困ってるなら力になりたいなって思う。ただまぁ力になれることってほとんどなくて、そこにもどかしさを感じたり。

今のネット世界をよく表現しているなと思いました。

歌姫として有名になっていく過程で批判コメントもたくさん届いたりするところや、ジャスティンことインターネット正義マンたちの暴力なんかも。正義を振りかざす人たちはこっちでもよく見かけるし。彼らがやってることを客観視させる映画はそれだけで価値がある気がします。

かくいう自分も、すずの母親が見知らぬ女の子を助けに激流に入っていって亡くなったシーンで、幼い我が子を置いて自身の命を危険に晒すのはどうなんだって思ってしまいました。そしたら直後にそういう批判コメントのシーンが差し込まれて、助けたいという一心での行動を批評する立場になんかないはずなのになって自省することになりました。

そして随所で匿名で好き勝手言うズルさを感じたからこそ、最後の歌唱シーンが最高にカッコよく見えた。たったひとりの信用を得るために匿名の衣を脱いで生身の自分自身で表現する。それぞれ自分自身に置き換えてみればわかると思いますが、これはほんっとうに勇気のいること。本名でブログ書けるかって言ったら、そりゃきびしい。

とても等身大な物語。臆病で自信のない女の子が顔も知らない「竜」に寄り添いたいと一生懸命になるお話。優しい人というか・・・人に優しくあれる人でいたいと思える映画でした。

 

歌が象徴的で物語においても重要な役割を担っていて良かったです。『君の名は。』以降、とりあえず音楽と綺麗そうな映像流しておけばええやろ的な作品をちらほら見たので・・・w 

初見だといろんな期待をしながら見るので賛否両論になったのかなと。試すような心構えで見たら楽しめない映画かもしれません。それを覆すほどのエンタメ性はあまりないかも。でも寄り添ってみれば納得できるし、素敵な映画だと思えると思います。作品性を理解した上でもう一度見てみるとより良く感じました。

まぁ欠点はちょいちょい棒読みが入ることですね。リアルさの演出だと言われればそうなのかなーって感じですがw そこは全員プロを揃えて違和感なくして欲しかったです。メインキャラたちもちょっとあやうい・・・。

あとはキャラクターが多いせいでひとりひとりが薄い。竜の正体を特定させないための策かなとも考えたのですが、だとしたら本人を影のあるイケメンにしすぎ。初めて目にしたときからオーラありすぎて絶対コイツ!ってなったw

 

ぼくらのウォーゲーム』『サマーウォーズ』という本命があった上で、陰で地味なんだけど温もりのある第三の作品があってもいいかなって思いました。かつて選ばれし子供たちだった方にはオススメしておきます。どれも見たことのない人にオススメするならまずは『サマーウォーズ』からどうぞ!自分はとにかく『ぼくらのウォーゲーム』を見直したくなりました!